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第134回芥川賞受賞作。
住宅機器設備メーカーに勤める女性と同期の男性との恋愛とも友情とも違う関係を描く。
芥川賞候補になった「勤労感謝の日」を併録。
絲山秋子の作品を読むのは初めてだが、この人は日常の一面を切り取るのが上手い人だなというのが第一印象である。
表題作は同期入社した男女の話だ。
僕の同期に女性はいないけれど、「私」と「太っちゃん」の関係はすごく理解できる。僕の場合で言えば、同期との関係は友情でもあると同時に、友情とは違った連帯感を感じることがある。それは多分、他の人でも、そして男と女であっても割に一緒だろうという気がする。いや、男と女だともう少し微妙になるだろうか。
本作の二人は、恋愛関係というほど深い関係でもなく、友人関係というほどプライベートに踏み込みあっているわけでもない。しかし一緒に飲んだりするし、そして同期だから通じ合える心理というものはある。社会人をやっている分、そういった微妙な、しかし確かな繋がりというものは、まるでわが事の様に理解することができる。
正直言って短くて物足りない面もあるのだけれど、この雰囲気とリアルさは見事としか言いようがない。上手い作家だという印象を抱いた。
本書に併録の「勤労感謝の日」もお勧め。
いわゆる「負け犬」のぶちまけるような勢いのある文体が心地良い。個人的には表題作より、こっちの方が好みだ。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
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